遺言書を残すときの民法上の規定

当所の相続手続きは、ただの事務処理ではなく、大切な人へ自分の気持ちを伝えるための「何か」です。

その中で遺言書というのは、気持ちを伝えるお手紙と考えています。

そして遺言書には民法上の規定がありますので、ルールに則って作成することも大切です。

この記事では、滋賀・京都で遺言書作成や不動産名義変更のサポートをしている岩渕司法書士事務所が、遺言書の民法上の規定について解説いたします。

自筆証書遺言のルール

遺言書の作成方式を大きく分けると、自筆証書遺言・公正証書遺言の2つになります。

自筆証書遺言は遺言者が自筆で書くものであり、公証人が関わりません。

自筆証書遺言を作成する際は、以下のようなケースを避ける必要があります。

1.遺言書に日付がない・特定できない

2.内容が不明確な遺言書

3.加筆/修正の手順間違い

4.パソコンで作成された遺言書

5.署名のない、または他人が署名した遺言書

6.他人の意思の介在が疑われる場合

7.レコーダーや動画で録音・録画した遺言書

8.2人以上の複数人で書いた遺言書

9.押印がない遺言書

10.遺言者が15歳未満の場合

それでは、それぞれのケースについて詳しく解説していきます。

1.遺言書に日付がない・特定できない

自筆証書遺言には作成日を必ず記載しなければいけません。

よくあるミスが「令和〇〇年〇〇月吉日」といった、書き方です。

この書き方では日にちが特定できないため、遺言書が無効になってしまいます。

また日付も自筆の必要がありますので、スタンプ印や印字での記載は無効になります。

日付はしっかりと明確に記載してください。

2.内容が不明確な遺言書

遺言書の内容は、本人や当事者だけではなく誰が見てもわかる書き方にしてください。

例えば財産として銀行預金がある場合、銀行名・支店名・口座番号・名義まで記載する必要があるのです。

もし不動産の遺産相続がある場合、あらかじめ不動産の登記簿謄本を準備し、土地の地番や家屋番号といった詳細な登記情報を正確に記載しなければいけません。

故人の意思を正確に受け取り判断するためだけではなく、役所での手続きでも使用する大切な情報となります。

不明確な内容にならないよう、必要な情報を準備しておくといいです。

3.加筆/修正の手順間違い

遺言書は書き間違えの修正方法にもルールが定められています。

間違えた箇所に二重線を引くだけでは、その遺言書は無効になってしまうのです。

間違えた箇所には二重線を引いて押印し、正しい内容を記載します。

そして遺言書の末尾や空いた箇所に「〇〇行目の〇〇文字を削除し、〇〇文字を追加した」と自筆で明記し、署名します。

どれかひとつでも抜けていると無効となってしまうため、書き間違いをしてしまった場合は最初から書き直すことをおすすめします。

4.パソコンで作成された遺言書

自筆証書遺言は、日付や氏名を含む全文を自筆で作成しなければいけません。

パソコンで作成したものを印刷した遺言書は無効となりますので、注意してください。

ただし例外として相続財産目録はパソコンで作成したものでも有効です。

例えば、不動産の登記簿謄本のコピーや通帳のコピーの添付も可能です。

自筆ではない財産目録には、必ず目録(両面に記載がある場合は目録の両面)に自筆の署名と押印が必要になります。

5.署名のない、または他人が署名した遺言書

遺言書は必ず全文自筆でなければいけません。

署名が抜けていたり、他人が署名した遺言書は無効となります。

全文を自筆したことで満足してしまい、日付や署名が抜けてしまうケースも多くありますので注意してください。

例え夫婦であっても、自筆証書遺言では代筆での署名は無効となります。

本文の内容はもちろん、日付・署名・押印まで自筆で書かれていることを確認してから遺言書を保管してください。

6.他人の意思の介在が疑われる場合

本人の意思ではなく利害関係のある相続人の意思が含まれると疑われた場合、法的に有効な遺言書であっても無効になるケースがあります。

例えば認知症の遺言者に、ある相続人だけに利益があるように誰かが指示して書かせたのでは?と疑われるような場合です。

その際、当事者間の話し合いで解決できなければ、「遺言無効確認の訴え」を起こし裁判で争うことになってしまいます。

本人の判断能力が問われる場合は自筆証書遺言ではなく、公証人が作成代行をしてくれる公正証書遺言の方式にしておくと安心です。

7.レコーダーや動画で録音・録画した遺言書

本人の意思ではなく利害関係のある相続人の意思が含まれると疑われた場合、法的に有効な遺言書であっても無効になるケースがあります。

例えば認知症の遺言者に、ある相続人だけに利益があるように誰かが指示して書かせたのでは?と疑われるような場合です。

その際、当事者間の話し合いで解決できなければ、「遺言無効確認の訴え」を起こし裁判で争うことになってしまいます。

本人の判断能力が問われる場合は自筆証書遺言ではなく、公証人が作成代行をしてくれる公正証書遺言の方式にしておくと安心です。

8.2人以上の複数人で書いた遺言書

2人以上の共同で1つに書かれた遺言書は「共同遺言」と呼ばれ、法的に認められていません。

例えば夫婦連名での遺言書を作成していても、その遺言書は無効となってしまいます。

自筆証書遺言は、日付や署名を含む遺言書の全文を自筆で作成しなければ法的に認められないものです。

複数人で自筆証書遺言を作成する際は、別々の書面にそれぞれ署名を含む遺言書の全文を記載してください。

9.押印がない遺言書

遺言書には日付や署名を含む遺言書の全文に加え、必ず押印が必要です。

使用する印は実印以外でも有効になり、認印や拇印、シャチハタのような印でも認められます。

ただし、拇印や指印は遺言者本人のものである証拠がなければ立証が難しくなるため、印鑑の使用がおすすめです。

10.遺言者が15歳未満の場合

遺言を残せるのは15歳以上と民法で定められているため、15歳未満の人が残した遺言書は無効となります。

15歳未満であれば親権者が代理で作成しても法的に認められません。

また15歳以上の未成年の場合、親権者の同意なしでも遺言書を残すことができます。

公正証書遺言のルール

公正証書遺言とは、公証役場において公証人に遺言書を作成してもらう遺言書の方式です。

自筆証書遺言と効果は同じですが、公証人という専門家が作成に関わるため、適切なアドバイスを受けられ確実に作成できる手段です。

しかし公正証書遺言でも無効になってしまうケースがあるのです。

それは遺言者に遺言能力がない場合です。

遺言者が認知症や精神障害といった内容を理解していない状態で本意ではない遺言書を作ってしまった場合、親族や相続人から無効の訴えが起こる可能性があります。

認知症や精神障害による遺言能力の判断は非常に難しいため、まずは医師に遺言作成能力の有無を診断してもらってから作成してください。

まとめ

遺言書は故人の最終意思を正しく確認し、それを尊重するためのものです。

そのため形式について民法で厳しく定められているのです。

また有効な遺言書であっても、関係者全員の同意があれば遺言書は無視して遺言と異なる遺産分割も可能になります。

自身の死後確実に思いを伝えたいとお考えの方は、専門家に相談して作成するのがおすすめです。

ブログ筆者:
岩渕誠

事務手続きに「愛」をもたらす司法書士。 どんな手続きにもストーリーがあります。それが人生最後のストーリーならなおさらです。この人に事務手続きしてもらって心からよかったと思っていただけるように、愛情込めて事務手続きをいたします。