遺言書の有効期限について

最近、40代・50代の方でも積極的に終活を行う方が増えてきました。

自分の最期について真剣に考える方の中には、40代・50代のうちから「遺言書」を作成する方も多くいます。

そのため最初に遺言書を作成してから、気づいたらだいぶ年月が経っているということもあります。

いざというときに、10年以上前の遺言書が見つかることもあり得ます。その際に気になるのが遺言書の有効期限や効力がどうなるのかです。

場合によっては、作成してから長期間経過しているために、資産や状況が変わっていて遺言書の内容との相違があることも考えられます。

この記事では、滋賀・京都で遺言書作成や不動産名義変更のサポートをしている岩渕司法書士事務所が、遺言書の有効期限や遺言書の取り扱いについて解説します。

遺品整理で突然出てきた遺言書。10年前のものだけど効力はある?

遺言書の存在は、親族に知らされている場合とそうでない場合があります。知らされていない場合、遺品整理などで発見されることもあります。

本人が託した相続の意思が書かれている大切な遺言書ですが、10年以上も前に書かれている場合は、どうなるのでしょうか?

遺言書には期限はない

結論からお話しすると、遺言書に有効期限はありません。

普通方式で作成された遺言書は、作成してから何年で効力がなくなるという期限はないのです。

また、本人による遺言書の撤回が無い限り有効になります。遺言書は、遺言者が死亡したのちに効力が生じるものです。

そのため、もともと有効期限がない認識になります。

また、公的証書を利用した場合でも、原本は遺言者が120歳になるまで公証役場に保管されるので、120歳以降に亡くならない限り有効期限は関係がないということです。

遺言書の内容と実情に相違がある場合の対処法

先ほど、遺言書には有効期限がないことをお伝えしました。

ただ、作成したのがあまりにも前すぎると遺言書に書かれている内容と事情が変わっている場合があります。

例えば、家族構成や関係性などさまざまな状況が変わっていたり、財産が増えていることなどです。

遺言者が、遺族に向けて意志を伝えるための遺言書であるにもかかわらず、実情との相違があることで内容が適切でないことも生じます。

例えば、遺言書に書かれている不動産が既に売却済みである場合は、遺言者によってその部分のみ撤回されたという扱いになります。

また、遺言書に書かれていない財産などの遺産がある場合は、遺産分割協議が必要です。

遺言書は定期的に見直したほうがよい理由とは?

遺言書を作成してから長期間が経っている場合には、作成当時から現在までの間に財産や人間関係などの変化が起こっていることも十分にあります。

遺族同志の相続のトラブルを避けたいという思いで、作成することが多いのも遺言書です。

しかし、遺言書に書かれている内容と遺言者が亡くなった時点での事情に相違があると遺族内でのトラブルの原因になってしまうこともあります。

そのため、一度遺言書を作成してもそのまま長期間放置することはおすすめできません。

一年に一度程度の見直しをして財産の確認や家族との関係性などを改めて確認するようにしてください。

遺言書の見直しで気を付けること

自身で遺言書を作成する場合は、法律上の要件を満たしていることが前提です。

規定に沿った形式で作成されていない遺言書は無効となってしまいます。

近年、「エンディングノート」などを活用して終活を行っている方も多くいますが、民法の規定に従った形式でないものであれば遺言書としての効力は生じません。

また、複数の遺言書があるとそれぞれの遺言書に効力があるため相続などが複雑になります。

新しい遺言書を作成した場合は、古い物は処分するようにしてください。公正証書の遺言書では、頻繁に見直しをして書き換えることは難しいかもしれません。

その対策として、最初に遺言書を作る段階で、以後の状況をある程度想定してできる限り書き直しをしなくていいようにしておくことがおすすめです。

まとめ

普通方式で作成された遺言書には、有効期限がありません。

ただし、古すぎる遺言書では、当時の内容と現状との相違から相続トラブルが発生してしまう可能性も考えられます。

遺言書は、死後に自分の意思を残すためのものだけでなく、残された遺族のためのものでもあります。

大切な家族に自分の意思をきちんと伝えるためにも、自力で遺言書を作成することに不安がある場合は、専門家に相談するのも一つの方法です。

ブログ筆者:
岩渕誠

事務手続きに「愛」をもたらす司法書士。 どんな手続きにもストーリーがあります。それが人生最後のストーリーならなおさらです。この人に事務手続きしてもらって心からよかったと思っていただけるように、愛情込めて事務手続きをいたします。