円滑に不動産相続するために知っておきたい規定

不動産相続は、あまり身近な話ではないとう方も多いことと思います。

しかしいざ親や親族が亡くなったとき、ほかにもやらなければいけないことが多く対応に追われてしまうという可能性があるのです。

不動産相続は少しむずかしい話題であるからこそ、身近に起こりそうな例題をもとに規定やルールについて学ぶことをおすすめします。

この記事では、滋賀・京都で遺言書作成や不動産名義変更のサポートをしている岩渕司法書士事務所が、不動産相続するために知っておきたい規定やさまざまなケースにおける対処方法について解説します。

ぜひ参考にしてください。

ケース1:私道

『相続した不動産を売却しようと思ったら、隣接した私道の移転漏れをしていたことがわかった。そのせいで不動産が売れなくて困っている』

私道とは、個人や団体が所有している土地を道路として使用している区域のことをいいます。

この私道は不動産登記においてとても重要な要素なのです。

建物と道路の関係性

建築基準法において、公道・私道を問わず道路と接していない敷地に建物は建てられません。

もし隣接した私道の権利を持っていない敷地の場合、公道につながっていない敷地とみなされ、宅地はもちろん駐車場としても利用できない土地になってしまうのです。

その場合、買い手が見つからず売却できなくなってしまいます。

通常は不動産登記を担当した司法書士がその土地について調査し、移転漏れがないように確認します。

不動産売買、不動産相続の名義変更の際には十分な調査を

私道の他にも、離れた場所の土地を所有していたことに気づかず、移転漏れをしてしまうケースもあります。不動産売買や名義変更の際には、移転漏れがないか司法書士と相談しながら行ってください。

ケース2:二重譲渡

『数年前に相続してまだ名義変更をしていなかった土地。ようやく名義変更をしようと思ったら、別の人物に売却されていて自分のものではなくなっていた』

これは不動産の相続を受けてから名義変更まで時間を要した場合に起こるケースです。

不動産の権利

不動産は相続したからといって自動的に所有権が移るわけではありません。

民法177条には、

『不動産に関して物権の得喪があった場合には、登記をしないと第三者に対抗することができない』 と規定されています。

いくら先に相続していたとしても、何らかの手違いにより第三者に権利が渡り、その者が名義変更を先に行っていれば現在の所有者から不動産の権利を取り戻すのはむずかしくなります。

名義変更の登記はすぐに行う

2021年に不動産登記法改正の予定とされており、相続登記や住所変更の登記申請が義務化される見込みです。

相続をスムーズに行うためにも、不動産を取得した際には必ずすぐに名義変更の登記をしてください。

ケース3:隣接した土地との境界

『相続した不動産を売却しようと思ったら、隣の土地との境界線が不明確だったせいで売却できなかった』

これは隣接した土地との境界線を明確にしていなかった不動産を相続した際に発生してしまうケースです。

境界線を明確にするための境界確定測量

境界線が明確にならなければ、土地が確定できず売却はできません。

境界線が不明確な場合、まず土地家屋調査士(測量士)に依頼して測量を行います。

隣接した土地の所有者の立ち合いのもとで測量を行い、両者の合意のもとで境界を確認していく流れです。

両者の関係が良好でスムーズに合意できたとしても、2〜3ヵ月ほどかかります。

もし両者の合意ができず、話し合いで解決できない場合は、数年の期間がかかる可能性もあります。

筆界特定制度

境界線問題を解決する手段として、筆界特定制度があります。

筆界特定制度とは、土地の一筆ごとの境界を決定するための行政制度のことです。

専門家である筆界調査委員が土地の実地調査や測量、事情聴取といったさまざまな調査を行い、意見を筆界特定登記官に提出し、筆界特定登記官によって筆界特定が行われます。

裁判を行うよりも費用の負担が少なく、短い期間で判断が示され、隣接した土地の所有者の合意がなくとも実施できるメリットがあります。

ただし筆界特定制度に法的な拘束力はなく、行政によって基準が示されるにとどまります。

ケース4:生前贈与

『相続税の対策のためと思って子どもに不動産を生前贈与したら、忘れた頃に高額な贈与税の請求書が届いて支払えない』

これは相続税を減らすことを考え、不動産を生前贈与した際に起きるケースです。

贈与税

動産を生前贈与しておけば、相続時には不動産が含まれないため相続税は減ります。

しかし、生前贈与した不動産に発生する贈与税は、相続税よりも税率が高いのです。

贈与税の請求は忘れたころに届き、原則として現金一括での支払いになります。

専門家に相談を

贈与税を期日までに一括で支払えない場合、分割して収める「延納」という制度があります。

また親子間の生前贈与の場合、「相続時精算課税制度」という特例を使えば贈与税がかからないようになる可能性があります。

しかし条件によっては相続時精算課税制度が適用されないこともあるため、どのような方法をとるべきか、専門家と相談して判断することをおすすめします。

不動産の生前贈与は安直に行わず、生前贈与と相続のどちらが最善の方法か専門家に相談してください。

まとめ

不動産相続に関する基礎知識を身につけることで、いざという時に円滑な相続手続きを行えるようになります。

司法書士は不動産登記に関する専門家です。

不動産登記・名義変更に関するお悩みは、司法書士に相談するのをおすすめします。

相続前からできる準備もありますので、相続前後を問わず困ったときはお気軽にご相談ください。

ブログ筆者:
岩渕誠

事務手続きに「愛」をもたらす司法書士。 どんな手続きにもストーリーがあります。それが人生最後のストーリーならなおさらです。この人に事務手続きしてもらって心からよかったと思っていただけるように、愛情込めて事務手続きをいたします。